第1回アイデアソン 株式会社umari 代表取締役 古田 秘馬 様

5月29日(火)に第1回アイデアソンを開催しました。今回は、株式会社umari 代表取締役 古田 秘馬 様をゲストにお迎えし、キックオフスピーチをして頂きました。キックオフスピーチの要旨をこちらでもご紹介させて頂きます。



「観光地作り」ではなく、「関係地作り」


 新しいものを創造することを手がけてきた。色々となことをやってきたがその一つが「丸の内朝大学」。これまでに延べ2万人が受講。朝の時間に学ぶ場を作ろうと、朝の時間帯、丸の内エリアで使われていない会議室を活用するところから始まった。結果として、コミュニティが生まれ、人と人とが繋がるきっかけとなった。


 「何も作らない、何も壊さない」を基本としている。ある物を違う角度から見ることで新しい物が生まれる。目の前にある課題ではなく、その奥に潜んでいる課題、そもそも論として課題を考えることが大切。


 「丸の内朝大学」では、これまでに50以上の地域と連携して、「観光地作り」ではなく、「関係地作り」をしてきた。多くの観光は一度訪問したらそれで終わりだが、地域との関係を作るきっかけを提供すれば繰り返し何度も訪れるようになる。



「グローバル」と「コミュニティ」


 地域創生にも取り組んでいる。大手広告代理店がマスメディアを使って発信しているが、我々は地域がメディアになるという発想。キリンビールさんとは、地域のプロデューサー作りをするプロジェクトを行なっている。


 グローバルの反意語はローカルではなくコミュニティだ。グローバルビジネスの基準では、砂浜にある小さな小屋は不動産価値ゼロ。だけれども、サーファーにとっては大切な小屋だったりする。ローカルにグローバルのビジネスを持って行っても結びつかない。


 コミュニティに核ができると、色々なことができる。キリンビールさんとのプロジェクトでは、ビール会社が旅行会社になってもいいのではないかということで、「ビア ツーリズム」を立ち上げた。いろんなことが観光に繋がる。物見遊山のように、観光として観光に行こうという観点だけではもったいない。




移動の可能性


 移動も単に移動するだけでなく、いろんな仕掛けができる。その一つがレストランバスだ。2階オープントップのバスで、1階にキッチン、2階には座席とテーブルがある。新潟ではランチを1万4千円で提供した。利用者の7割は地元の人でリピーターも続出している。東京のミシュランレストランに交通費を払って行くより、地元で美味しいものが食べられると、地元の人に支持されている。現在、レストランバスは4台あり、オリンピックの時には7台まで増やす予定。東京でもいろんな街とコラボレーションしたいが、東京都は広告条例で規制が厳しく悩ましい。


 ローカル鉄道の丹鉄も経営している。ローカル鉄道は日常交通として使われなくなっているが、違う使われ方があるのではないかと考えた。沿線全体をレストランに見立て、各駅で一品ずつ提供。沿線全体でフルコースを楽しんでもらうというものだ。新しいものを作るのではなく、沿線を何と捉えるかで編み出されるものがある。



価値の多面性


 かつてリクルートがR25というフリーペーパーを出していたが、「D30」という企画を打ち出した。当時、自分も135kgあった。デブをかっこよく呼ぼうと「D」と名付けた。デブで体脂肪30%以上の人をターゲットにしたのが「D30」。物凄い反響で35社から協賛のオファーがきた。プロジェクト関係者へのギャランティーはお肉。「肉」本位制だ。現金1万円より幻の但馬牛をもらえる方が僕らはテンション上がる。これこそ経済でないか。ワールドカップの決勝戦のボールボーイだって、サッカーファンにとっては何百万円出してもやりたい人はいる。だけど、興味がない人にとっては単なる労働に過ぎない。誰に対して価値があるのかということだ。



「西のサンティアゴ、東の熊野古道」


 最近、インバウンドが話題だが、外国人は数多いる。欧米人と言ってもいっぱいいる。フランス人とイタリア人では嗜好が違うのに一色単にし過ぎていないか。熊野古道が世界遺産になった時、カナダ人のブラッド・トオル氏は、巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステーラと一緒に売り出した。「西のサンティアゴ、東の熊野古道」と巡礼地としてPRした。サンティアゴは巡礼地として既に有名だから、サンティアゴを訪れた人に熊野古道を売り込むのは見事。世界遺産ファンは国ではなく、世界遺産があるところに赴く。世界遺産を見に行くからだ。なのに日本の多くの観光PRは行政単位の県、市ごと。誰に売り込みたいのかを明確にする必要がある。



地域ブランド


 地域の取り組みがブランドになりつつある。例えばアメリカのポートランド、スペインのサン・セバスティアン。デンマークのサムソ島は、人口4,000人の島だが、100%自然エネルギーに転換した。グリーンアイランドとして世界中から視察を目的にやってくる。取り組みがブランド化されると観光客は継続してやってくるが、イベントはイベントが終わると観光客も来なくなる。


 新しいものが生まれる土壌を大切にしないといけない。シリコンバレーに起業家が集結するように、富山県の岩瀬地区はガラス工芸家や作家が沢山集まっている。なぜか。評価される可能性があるからだ。認められる可能性がないところにいい人は集まって来ないということだ。



「高付加価値」と「他付加価値」


 高付加価値とよく言われるが、高いものではなく他付加価値が必要とされている。香川県の地域商社のお手伝いで、うどんをブランディングした。うどんは一杯数百円。最高級の小麦を使っても高付加価値には限界がある。そこで、讃岐うどんの英才教育キットを作った。うどんを食べ物でなく、子供たちが五感で感じながら学べる教材にした。発売して数週間で500セット販売した。こういったものをどれだけ作れるかだ。



「コンセプト」と「アイデア」


 コンセプトは、なぜ、それをやるのか。アイデアは、どうやってそれをやるのか。多くの地域はどちらかが欠けている。「子供たち笑顔溢れる街づくり」とコンセプトがあっても、具体的に何をやるのかがなかったりする。ゆるキャラ、ご当地アイドル、Bグルメ、世界遺産、大河ドラマ、マラソン大会はいろんな地域でやろうとする動きがあるが、なぜそれをやるのかが明確になっていないことが多い。そして、コンセプトの上に地域ならではの条件があって、アイデアがあることを忘れていけない。



社会的評価の高いプロジェクト・商品の特徴


 社会的評価の高いプロジェクト・商品には6つ(SMAPSV)のポイントがあると思う。まずシンプル(Simple)であること。そしてミスマッチ(Miss Match)。レストランなのにバス、六本木なのに農園というようなギャップがあること。次にアクション(Action)。参加を感じられること。その次は、フォトジェニック(Photogenic)。思わず写真が取りたくなること。そして、シェア(Share)したくなること。最後はビジョン(Vision)。大義があること。


 ある物を見て、見えている視点だけでなく、その物の背後にあるストーリーをどこまで想像できるか。新しい観光を考える上で、一度、観光のことから離れてみることが大事。農作業が観光となってアグリツーリズムが生まれた。今まで観光でなかったものが観光になることがある。6つのポイントを踏まえて、新しい観光を創造して欲しい。



Tokyo Metropolitan University Tourism Strategy

「公立大学法人首都大学東京」が行う観光戦略プロジェクトのオフィシャルメディアです