プロジェクトについて

Ⅰ. はじめに

 公立大学法人 首都大学東京は、小池百合子都知事の要請に基づいて、観光戦略研究プロジェクトを推進することになりました。 

 小池都知事は、東京都を世界のOnly One観光都市とすべく熱心に戦略を推進しておられますが、公立大学法人 首都大学東京に対しても、そうした目標に資する活動を推進するよう昨年4月に要請がありました。

 本法人では、その要請に沿って、何ができるか、何をすべきか、検討してまいりましたが、新しい時代を迎え、未来志向の都市観光のあり方を充分に研究するとともにこれからの時代をリードする斬新な観光事業を創出できるような若い人材を養成することが、首都大学東京が追求するにふさわしい観光戦略ではないかと考え、その趣旨で具体的な準備を進めております。

 以下、プロジェクトの概要について記したいと思います。プロジェクトは、3本の柱から構成されます。それらは、1. 観光戦略研究会、2. 実践観光学習・見学会、3.観光ベンチャー養成プログラム、です。


Ⅱ. 観光戦略研究会:新しい時代の都市観光のあり方の研究

1. 新しい時代の観光のあり方

 日本の観光はこれまで長い間、David Atkinson氏が指摘するような"昭和の観光"とも言うべき大量規格生産型の観光モデルでやってきました。それは国内の人口が急速に増加する時代の観光であり、増大する需要に規格大量生産型のサービスや物販を提供するものでした。

 これからは時代が大きく変わります。人口は減少し、高齢化し、国際化が著しく進みます。その環境条件で観光が発展するためには、面白く、繰り返し求めたく(リピーター)なるような高質なサービスを提供する必要があります。本プロジェクトでは、そうした観光を研究するため「観光戦略研究会」を設置します。

2. 「観光戦略研究会」

 新しい時代の観光のあり方を幅広く、多面的に、かつ深く研究するために、各方面の専門家、オピニオンリーダーを招き、概ね月1回のペースで「観光戦略研究会」を開催し、講演を伺った後に質疑応答で勉強を深めます。研究会は原則として平日の午後2時から4時までの時間帯で開催します。

 テーマは、日本や世界の観光戦略とその動向、東京の観光政策とその実績、観光産業の役割と発展の可能性、多様な観光産業の実態と課題、多様なアプリの開発と利用など情報産業と観光の関係、都市観光の重要なコンテンツである食、文化、entertainment, 町場の人気拠点の研究、夜の都市観光やlight up, また基幹インフラであるホテルや旅館などの宿泊施設とサービス、そして東京と全国各地との連携、東京のハブ都市としての機能と全国とのネットワーキングなど、幅広い領域の中から選び、大局観と同時に具体的な実態について学びます。

 この研究会には、講師やアドバイザー、本プロジェクトの設計と運営を支えるファシリテーターの方々、プロジェクトの趣旨に賛同される産業界の方々、ベンチャー志望の方々、問題意識を共有する学生の方々、事務局スタッフなどが参加します。


Ⅲ. 「実践観光学習・見学会」

1. 観光の現場の見学並びに実務の学習

 著名な講師の方々から観光についての大局観や専門知識を学ぶ上記の「観光戦略研究会」と併せて、観光の現場を訪ねて見学する、そして、観光に関わる事業を展開している企業や組織の現場を訪問して取り組まれているプロジェクトや実際に推進しておられる事業などを見学・学習させていただく、また東京のユニークベニューや都市観光を彩るナイトライフあるいは人気スポットや催しなどを訪問見学する。さらに必要に応じて、国内や海外の学ぶべき観光スポットや事業などを訪問する特別見学プロジェクトも企画します。

2. 「実践観光学習・見学会」

 上記のために「実践観光学習・見学会(仮称)」を編成して、2月に1回程度、見学会あるいは学習会を開催する。これは当観光研究プロジェクトに参加する人々から希望者を募って実施する。観光に関わる事業を推進しておられる企業の方々には、現場でそうした事業や計画などについて説明戴き学習させていただく。当プロジェクトに参加される企業の皆様には是非、現場で学習させて戴く機会を賜れればと思います。国内や海外訪問の特別見学プロジェクトは、参加者の皆様と適宜、検討して具体化したいと思います。


Ⅳ. ベンチャー養成プログラム

1. ベンチャーの養成

 首都大学東京は教育・研究機関なので、その本旨に鑑み、本プロジェクトは、東京のこれからの観光を推進するために未来志向のユニークな観光事業を創出したいと志す有為な人材を募り、彼らがベンチャーとして事業を構想し、限りなく実現に近づけるよう多面的な支援を行います。

 若いベンチャー事業家達はユニークで豊かな発想から多様で有用なアプリを創り出すことに興味と得意分野を見出すでしょう。また、東京は世界から見れば日本の代名詞のような都市ですが、日本に来てみれば、全国各地に多様で豊かな観光資源が存在します。東京を訪ねることが、併せて日本の豊かな観光につながる様々なネットワークや情報提供の可能性は無限にあり、若い感性でそうした可能性を拓いて戴くこともベンチャーに期待したい分野です。

2. アイデアソン

 ベンチャーにとって最も重要なことは、既に多くの企業や人々が参入している分野や採用しているビジネスモデルではなく、自分が新しい分野を発見しあるいは創出する、前例のないビジネスモデルをつくり出すこと、言い換えればいわゆるRed Oceanではなく、自分だけのBlue Oceanを創り出すことです。

 それは単なる思いつきだけでは実現しません。自分の興味のある分野を広い視野から位置付け、その内容を良く知り、ビジネスモデルの創出に取り組んでいる人々の努力を理解し、前人未到の領域を発見し、前例のないユニークでしかも消費者に受け入れられ、経済合理性のあるビジネスモデルを生み出す力強いしかも粘り強い努力が必要です。

 そのための切磋琢磨をしやすい場として、本プロジェクトでは「アイデアソン(Ideathon)を設けて、意欲ある人々の自己鍛錬を支援します。「アイデアソン(Ideathon)」は、アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語で、設定した特定のテーマについて多様なメンバーが対話を通じて、新たなアイデアやビジネスプランの創出を短期間で行うものです。そこではベンチャー起業家同士が自由闊達な議論を通じて、相互に刺激し、教え、学び合うことができます。

 ベンチャーは新たな創造への挑戦ですが、無からいきなり有を生むことは困難です。そこでアイデアソンには、ベンチャー事業家として一定の実績を挙げている方々に参加戴き、彼ら自身の切磋琢磨に活用戴くとともに、そうした方々の切磋琢磨に身近に触れ、議論に参加する中から成長を志す若い人々を意欲に応じて迎え入れ、Blue Ocean 創出の活動を広げていきたいと思います。

 そうした活動の拡大に資するため、オブザーバーとして、本プロジェクトのアドバイザー、協賛企業、東京都職員、本法人の教員、学生等が適宜参加し、それぞれの観点から議論に参加することで、新たな化学反応が生まれることを期待します。

 アイデアソンは差し当たり、月1〜2回のペースで、夕方開催し、フリーフォーマットで自由な議論と学びの機会を通じて、人々の成長を期したいと思います。


Ⅴ. 東京の観光事業に鋭角的な貢献を

 本プロジェクトは上記のような総合的な、研究、見学、学習活動を通じて得られる知識や情報、ネットワークを活用して、未来志向でユニークな発想のできるベンチャー志望者を育成することを目指します。そうした人材が創り出すユニークな事業は、東京都が推進する大規模な観光発展事業に、ユニークで有用な視点と手がかりを提供するでしょう。また首都大学東京が学問的に推進する観光教育と研究に、実際的な刺激と可能性を示唆するでしょう。

 来るべき2020年の東京オリンピックは世紀の祭典ですが、経済的には、オリンピック後の落ち込みが懸念されます。人材の養成は、そうした経済変動を超えて、東京が新たな時代にふさわしいより高質で魅力的な世界Only Oneの観光コンテンツをもつ都市に進化することを支える最も重要な取り組みと考えます。公立大学法人 首都大学東京は、東京都が設立した唯一の総合大学グループとして、産業界など各界の参加と支援を得つつ、そのために最大限の注力をしたいと考えます。